レビュー

【レビュー】『アンチャーテッド 古代神の秘宝』 日本車のような「ノーティードッグ」、今日も安定

アンチャーテッド 古代神の秘宝 豊かな自然

「ノーティードッグ」ほど信頼のおけるゲームスタジオもない。彼らにゲームを作らせればグラフィックは良いし、内容も大概保障されてるしと良いこと尽くめだ。

まさにエース級の仕事ぶり。SIEワールドワイド・スタジオにおける精神的支柱。

野球でいえば、日本を代表するエースピッチャー「マー君(田中将大投手)」みたいな存在だと勝手に思っている。

突然野球の例えで恐縮なのだが、思ったことがあるので言わせて欲しい。

マー君もノーティードッグと同じくエースを象徴するような存在だ。特に日本でプレーしていた時代において、彼が登板する日はほぼ勝利が約束されていた。野球ファンは試合を見ずとも勝利を確信し、機嫌よく風呂に洒落込んだものだった。それだけ圧倒的だった。

そんなマー君は一部ニューヨーク紙の見出しで以下のように評され、ネットで話題になったことがある。

「日本車のような田中、今日も安定」

マー君のエースのような安定感ある投球に対して、品質の高さと堅実な走りを兼ね備えた“日本車”というワードに例えているのが洒落ていて気に入っているのだが、『アンチャーテッド 古代神の秘宝』(以下、古代神の秘宝)をプレイしていて私は気付いたのだ。

「ノーティドッグ」はかような存在、つまるところ「マー君」なのではないかと。

ノーティードッグ
ノーティードッグは↓

田中将大投手

出典:田中将大OFFICIAL WEBSITE
マー君だった・・・?

「ノーティードッグ」=「マー君」説

要するに 「ノーティードッグ」とは、「マー君」が日本車のような投げっぷりで観客を魅了するかのように、誰もが楽しめる良質なゲームを日本車のような堅実さで作る開発会社、ということである。もっと言えば、高品質なリニア型ゲームを、マー君のような安定感、信頼感で生み出し続ける制作集団、だろうか。

「ノーティードッグ」が制作するゲームは本当に外れがない。

古くは『クラッシュ・バンディクー』、『ジャック×ダクスター』と名作を生み出し、昨今では『アンチャーテッド』、『The Last of Us』とプレイステーションを代表するIPを連発している。彼らの作るゲームはその全てが非常に高い水準でまとまっており、自らの社名をブランド化するに至っている。

中でも『アンチャーテッド』は、「ノーティードッグ」の名声を一層高めた歴史的なタイトルといえるだろう。このゲームはリニア型ゲーム、いわゆる「一本道ゲー」なのだが、アドベンチャー映画のエッセンスを実際のゲームプレイに落とし込み、筋書きに沿ってプレイすることで一つの映画となるような他に類を見ない「一本道ゲー」である。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 不思議な像を見る二人

一時、ゲームデザインの潮流において「オープンワールド至上主義」を感じさせる時期があった。

「自由度の高さこそ正義!時代はノンリニア!」を旗印に多くのメーカーがオープンワールド型タイトルの開発に着手。元々リニア型だったシリーズにもオープンワールドのトレンドは波及し、ゲーム業界は空前のオープンワールドムーブメントへ突入したのである。

実際のところ、オープンワールド型ゲームはとても楽しい。『The Elder Scrolls V: Skyrim』、『ウィッチャー3 ワイルドハント』、『グランド・セフト・オートV 』、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』など傑作揃いで、これらもその一端を示したに過ぎない。「RPGとかアクションはとりあえずオープンワールド化しとけば面白くなるんじゃね?」と言われれば、首肯しそうになる。

ウィッチャー3

出典:ウィッチャー3 ワイルドハント 公式サイト
傑作『ウィッチャー3』。個人的もう一度記憶を消してプレイしたいゲームランキング1位。

しかし、事はそう単純ではない。オープンワールド型ゲームの制作には密度を担保するための途方もない労力と、自由度を高めるための緻密な設計が必要となる。そして、この波に乗った一部のタイトルは、オープンワールド化による代償を払うこととなった。それはというと・・・

リニア型で実現できていたストーリーテリングが、オープンワールド型ではその限りではなかったのである。

ざっくり言ってしまうと、ストーリー展開がイマイチだったという話だ。オープンワールド化に伴うリソース不足が、物語を大味なものとしてしまった。

個人的な所感としては、その傾向が顕著なのが『ファイルファンタジーXV』や『メタルギアソリッドV』あたりの国産タイトルだった。これらのタイトルは、オープンワールド化を経て新たな魅力をプレイヤーに提供した一方で、リニア型だった過去作から継承するべき要素、つまり「ストーリーへの没入」を実現できなかった印象が強い。

ファイナルファンタジーXV

出典:FINAL FANTASY XV 公式サイト
長い開発期間を経てオープンワールドに舵を切った『FF15』。しかしその評価は賛否両論に・・・

今でこそ「オープンワールドは全能ではなく、あくまでゲームデザインの一つ」という認識に落ち着いたように思えるが、当時のイケイケなゲーム業界において、「オープンワールド最高!ノンリニア万歳!」な風潮を無視するのは難しい。トレンドを追求することは、クリエーターの性だからだ。

だが「ノーティードッグ」は違った。彼らは流行に囚われず、一貫してリニア型ゲームを作り、己の土俵で勝負し続けた。

その職人気質と矜持を感じさせる仕事ぶりは、自分本来の武器である150キロ超のストレートとスプリットを軸に戦い続け、ヤンキースタジアムを沸かせる「マー君」そのものだった。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 自由度を高めた箱庭マップ
とはいえ『古代神の秘宝』では道中に箱庭要素を導入している。シリーズの中では自由度高め。

誰でもトム・クルーズになれるゲーム

さて、いきなり正直なところを言ってしまうと、『古代神の秘宝』には何か革新的なゲームメカニクスだとか、野心的な試みがあるといったわけではない。

元々『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』(以下、海賊王と最後の秘宝)のDLCとして開発されていたという経緯があるため、ゲームの骨子は『海賊王と最後の秘宝』に酷似している。ゆえに『古代神の秘宝』の魅力を説明するには、シリーズが持つ普遍的な面白さに触れる必要性がある。

シリーズ一作目『エル・ドラドの秘宝』のキャッチコピーが「PLAYする映画」であったように、『アンチャーテッド』は映画的演出に特に力が入った作品だ。各チャプターのクライマックスには必ずと言っていいほど手に汗握るシチュエーションが用意されており、プレイヤーは映画のスタントマンよろしくド派手なシーンでキャラクターを動かすことができる。

例えるなら、映画『ミッション:インポッシブル』シリーズのアクションシーンを、ゲームに落とし込んでいる感覚に近い。

ミッション・インポッシブル ビル壁を登るトム

出典:Cinema Cafe

この映画には、ビルからビルを飛び移ったり、超高層ビルの外壁を横走りしたり、滑走路を助走する飛行機の上を走ったりと、人間離れしたアクションが毎回登場する。そして驚くべきことに、この常軌を逸したシチュエーションが基本的にCGスタント無しで撮影されているという何ともイカれた(褒め言葉)映画なのだ。

主演のトム・クルーズが全てのスタントをこなしているのはあまりに有名な話だが、もはやこの男はネイサン・ドレイクを超えた存在なんじゃないかと思わずにはいられない。これで還暦近いとか・・・ヤバすぎるだろトム・・・

ミッション・インポッシブル 飛行機の上を走るトム

出典:Cinema Cafe
飛行機の上を走るトム。もはや『アンチャ』じゃないか・・・

少々脱線してしまったが、こういった過激なアクションを、インタラクティブな体験として実現したのが『アンチャーテッド』なのだ。

このゲームは、刺激的なシーンにデザインされた進むべき道をプレイヤーがなぞることで、映画の一場面になるよう緻密に設計されている。そのシチュエーションの苛烈さは、長期連載している少年漫画の敵キャラよろしくどんどんエスカレートしている。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 落下しそうなクロエ

『古代神の秘宝』においてもこれは健在で、序盤からダイナミズムの限りを尽くしたシチュエーションでプレイヤーを引き込む。プロローグの舞台がスリランカの寂れた街というのも趣深い。逃走劇を演出する上で、ネオンが怪しく光る乱雑とした街並みが良いアクセントになっていると感じた。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 スリランカの街並み
中盤以降の冒険パートとコントラストがあって良き。

ただし、ここで一つ明記しておかなければならない。

「ノーティードッグ」が作り出す前述のシークエンスは、予めガチガチに演出されているがゆえに、“全ては予定調和であり、プレイヤーの介入する要素が薄いという二項対立な見方があることだ。

派手に崩れる遺跡などもレールに敷かれた舞台装置の一つに過ぎず、誰がプレイしても同じ内容に帰結する代り映えの無さは、特に目の肥えたゲーマーにとってはマンネリに感じるかもしれない。リニア型を煮詰めて凝縮させたようなゲームのため、仕方ないとしか言えないのだが・・・

コロナ禍に最適かもしれない、旅行シミュ的遊び

此度のコロナ騒動を受けて、多くの人がストレスを抱える日々を過ごしていることだろう。特に海外旅行を趣味としている人には、受難の日々が続くことは間違いない。

しかし!そんなあなたに朗報!

『古代神の秘宝』をプレイすれば、プチ旅行気分が味わえる!?・・・かもしれない。

そう感じる理由は、このゲームの特徴として、クライミングを主軸とした「探索」がコンテンツの柱である点だ。

クライミングとは、手っ取り早く言えば『アサシンクリード』のアスレチック要素だ。どんな断崖絶壁も、『アンチャーテッド』の登場人物は驚異の握力で登りきる。このクライミングを採用することで3次元要素が加わり、奥行きある探索が可能となる。今となっては珍しくもない要素だが、『アンチャーテッド』においては印象的なロケーションでのクライミングが用意されているため、独自性は担保されている。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 断崖絶壁でのクライミング
断崖絶壁でのクライミング。分かっていてもちょっと怖い。

シューティングやステルスを含む敵との交戦もコンテンツの柱に違いないが、『古代神の秘宝』では殊更この探索が楽しく感じた。それはクロエとナディーンという女性二人にバトンタッチした新鮮さから来るものもあるし、素晴らしいアートディレクションによる、美しさと迫力が同居した景観が一役買っていたところもある。

この雄大な眺望というのは『アンチャーテッド』の特に優れた部分だろう。『古代神の秘宝』ではそれが極まった感がある。

葉っぱ一枚一枚が丁寧に描かれた自然と、創造性豊かな地形は精彩に富み、荘厳とした遺跡や巨大な像が与える迫力にはただただ圧倒される。実際プレイ中も立ち止まって眺めてしまうことが多々あった。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 雄大な景色
アンチャーテッド 古代神の秘宝 迫力の彫像
アンチャーテッド 古代神の秘宝 インド象の群れ

こんな時は、ゲーム界隈ではお馴染みとなった「フォトモード」を利用すると、より旅行気分を満喫できるだろう。明るさや角度など基本的な調整はもちろん、キャラを非表示にしたり特徴的なフレームをつけるなど、痒いところに手が届いた充実のモードが搭載されている。自分なりの「映える一枚」を撮ろうとすると、マップを東奔西走すること間違いなしだ。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 写真を撮るクロエ
ゲーム中のクロエも写真をよく撮る。女性主人公ならでは。

「ノーティードッグ」には、ゲームのアート部分には些細な妥協も許さないという強い意志を感じることがある。

『The Last of Us』では、PS3の限界に挑戦した超絶グラフィックを披露し、当時のプレイヤーを唸らせた。『アンチャーテッド』では、ゲーム的に特に意味のない手芸品や装飾品を手にとることができるのだが、この一つ一つをしっかり作り込むことで、冒険する舞台に確かなリアルティと説得力を持たせている。

『古代神の秘宝』も例外ではない。プレイすれば、誰もが異国情緒漂うインドの息吹を感じることになるだろう。コロナ禍というこの情勢において、海外に行ける日はいつになるのか分からない。もしあなたが少しでも旅行気分を味わいたいのならば、主人公クロエになりきって探索に出かけてみるのもいいかもしれない。ただし、ガンファイトを伴う危険な旅になることは間違いないけれど・・・

美しさと刺激に満ちた冒険に繰り出そう

「最近どうにも刺激が足りないな・・・」

こんな悩み、今だからこそ多いんじゃないだろうか?

もしあなたが日常に退屈しているのならば、『古代神の秘宝』はそんなニーズを満たし得る一作だ。舞台となる古代遺跡には多くのトラップと謎解きが待ち受けており、ゲームとしてのやり応えもさることながら、純粋に冒険心をくすぐられる。今時、ここまでストレートに『インディ・ジョーンズ』ライクな冒険映画を題材にしたゲームも少ない。

そして、印象的なロケーションの数々では、是非写真を撮りまくって欲しい。職人集団「ノーティードッグ」が粉骨砕身に作り上げた世界を素通りするだけでは、あまりにもったいない。

また、『古代神の秘宝』は唯一ネイトさん以外の主人公で遊べる貴重な『アンチャーテッド』でもある。これは大きなセールスポイントだ。

ミステリアスな魅力を持つクロエと、一本芯の通ったナディーン。この”強い女性のコンビ”は新鮮で、シリーズに新風を吹かせているだろう。両人とも過去シリーズに登場したキャラクターであるため、紡がれるドラマも興味深い。

アンチャーテッド 古代神の秘宝 クロエとナディーン
ビジネスライクな関係性から距離が縮まる描写も本作の魅力。

ゲーム性自体は『海賊王と最後の秘宝』と何ら変わりない。『古代神の秘宝』は徹頭徹尾『アンチャーテッド』シリーズの一作だ。それを「安定」と取るか「マンネリ」と取るかは、各々のプレイヤーの判断に委ねられるだろう。シリーズ経験者には、変わり映えのなさが退屈に感じることもあるかもしれない。

だがこのコロナ禍において、『アンチャーテッド』の世界はより輝きを放ったように感じる。少なくとも私は、この冒険の興奮が未だ冷めていない。

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