先日、PlayStation 5(以下、PS5)のゲームタイトルがついに発表された。大手、インディーズ問わず様々なタイトルが登場し、その数は28に及ぶ。ゲームプレイ映像もしっかり含む今回のビデオプレゼンテーションは、テンポも良く個人的に好印象だった。
「State of Play」の垢抜けなさと比べると隔世の感があったように感じる。やればできるやん!ソニー!
一応注意したいのは、今回の発表内容全てがローンチタイトルというわけではないことだが、とはいえその一端が発表されて素直に喜ばしい。同時に、過去のプレイステーションハードではどのようなローンチタイトルを用意していたのか気になってきた。”温故知新”という言葉があるように、過去から得られる新たな知見もあるかもしれない。
そこで本稿では、歴代プレステーションハードのローンチタイトルを振り返り、本数やジャンル、注目タイトルを分析していきたい。PS5のローンチタイトルに迫る何かが見つかるかもしれないし、単純な回顧録としても読み応えのあるものを目指した。
振り返り対象は、PlayStation~PlayStation4の据置型4つと、PlayStation Portable、PlayStation Vitaの携帯型2つである。それでは、行ってみよう!
PlayStation
出典:Wikipedia
初代プレイステーション(以下、PS1)で発売されたローンチタイトルは8本。数としては多くもなく少なくもなく、平均的といったところ。
ジャンルの内訳は以下の通り。
アクション | 1(熱血親子) |
アクションRPG | 1(クライムクラッカーズ) |
シミュレーション | 1(A列車で行こう4) |
シューティング | 1(極上パロディウスだ! DELUXE PACK) |
パズル | 1(TAMA) |
レース | 1(リッジレーサー) |
その他 | 2(麻雀ステーションMAZIN〜麻神〜、麻雀悟空 天竺) |
あまり強いラインアップには見えないが、バリエーションを重視していることは伺える。後に人気レースゲームへと成長する『リッジレーサー』、3Dポリゴンを生かした玉転がしパズル『TAMA』、本家SCEからは一人称アクションとアニメ風なキャラを融合させた『クライムクラッカーズ』が発売された。
同時期に発売された「セガサターン」と共に、3Dポリゴン時代の到来を告げるゲームを複数用意していることが興味深い。ゲームコンソールの進化の過程において、2Dから3Dへの進化は最も視覚的にインパクトがあり、ゲーマーのみならず多くの人をワクワクさせた。
注目タイトルは『リッジレーサー』。
出典:RENOTE
PS1で発売された『リッジーレーサー』は、元々アーケードゲームで稼動していたものの移植作だ。3Dレースゲームの中でも最初期の作品にあたり、この一作目を皮切りに続編が数多く制作された。今でこそシリーズはストップしてしまったが、PS4を除く全てのPSコンソールでローンチタイトルに名を連ねているのは特筆すべき点だろう。優等生過ぎるぞ『リッジレーサー』!
ゲーム性は『グランツーリスモ』と真逆で、リアルさよりも爽快感を重視したゲームデザインに仕上がっている。派手なドリフト走行で急カーブを曲がり切ったり、高低差をジャンプしたりと、気持ちの良い手触り感がウリだ。
余談だが、『リッジーレーサー』といえば多くのゲーマーは「リッジ平井」こと平井一夫氏を思い出すに違いない。SCE(現SIE)社長からソニー社長にまで上り詰めたエリート中のエリート。彼の流暢な英語をE3のプレゼンテーションで聞くのが好きだった・・・。
PlayStation 2
出典:Wikipedia
プレイステーション2(以下、PS2)で発売されたローンチタイトルは10本。麻雀や将棋で水増ししているのはご愛敬だが、PS1から微増した。
ジャンルの内訳は以下の通り。
アクションRPG | 1(エターナルリング) |
シミュレーション | 2(決戦 -KESSEN-、A列車で行こう6) |
格闘 | 1(ストリートファイターEX3) |
レース | 1(リッジレーサーV) |
音楽 | 2(drummania、ステッピングセレクション) |
その他 | 3(森田将棋、柿木将棋IV、麻雀大会III) |
『キングスフィールド』に似ているようで似て非なるアクションRPG『エターナルリング』、PS1でその人気を確立し順当な進化を遂げた『リッジレーサーV』、そしてローンチタイトルとしては高水準なグラフィックを実現し話題を呼んだ歴史シミュレーション『決戦 -KESSEN-』と、粒ぞろいのラインアップで勝負を仕掛けた。
特徴は音ゲーが充実している点。当時ゲーセンで音ゲーが流行していた影響もあり、処理能力が向上した家庭用ゲーム機にも進出してきた形だ。
ここで驚くべき点は、プラットフォーマーであるSCEのタイトルがないことだ。一応この5日後に『ファンタビジョン』というパズルゲーを出してはいるのだが、新ハード発売日にファーストパーティタイトル不在というのは今では考えられない。まあSCEの営業努力が結実し、サードが誘致された結果と言えるのかもしれないけど・・・。
注目タイトルは『エターナルリング』。
出典:PlayStation
一見すると『キングスフィールド』に似た一人称視点のアクションRPGながら、システムや雰囲気は大きく差別化された作品。まず見た目がフロムっぽくないというのが大きい。ダークな世界観がほとんどなフロムゲーにおいて、開けた野外がフィールドとして用意されていたり、普通に青空が広がっていたりする。
また『キングスフィールド』で導入されている「パワーゲージ」が『エターナルリング』にはない。基本的にパワーゲージがないとダッシュや攻撃ができないという制約を受けるため、シビアな戦闘になりがちなのだが、『エターナルリング』ではそれを取っ払っている。そのため『キングスフィールド』よりは多少間口が広い作品、と言えなくもない、かもしれない(とはいえフロムゲーなので・・・)。
PlayStation Portable
出典:Wikipedia
プレイステーション・ポータブル(以下、PSP)で発売されたローンチタイトルは6本。SCEが初めて携帯型ゲーム機市場に参入した記念すべきハードだが、タイトル数は控えめ。
ジャンルの内訳は以下の通り。
シミュレーション | 1(アーマード・コア フォーミュラフロント) |
パズル | 1(ルミネス -音と光の電飾パズル-) |
格闘 | 1(ヴァンパイア クロニクル ザ カオス タワー) |
スポーツ | 1(みんなのGOLF ポータブル) |
レース | 1(リッジレーサーズ) |
その他 | 1(麻雀格闘倶楽部) |
国民的ゴルフゲームの携帯機版『みんなのGOLF ポータブル』、『アーマード・コア』からアクション要素が排除された異色作『アーマード・コア フォーミュラフロント』、水口哲也氏プロデュースのパズルゲー『ルミネス』など、数は少ないものの注目に値する作品が複数あり、一定のニーズを満たしたラインアップに感じる。
携帯機を意識した結果か、手軽さや1プレイの短さを念頭に置いたジャンルの作品が多い。『アーマード・コア』がシミュレーション化しているのはいい例だろう。
個人的にPSPについては思い入れがあって、スマホが普及していない時代において、PS2に近いクオリティで携帯機をプレイできるというのは、当時高校生だった私には衝撃的だった。今だからこそ言えるが、授業中にめっちゃプレイしていた(笑) そんな学生、多かったのではないだろうか。
注目タイトルは『みんなのGOLF ポータブル』。
出典:PlayStation
ゲーム性についてはシリーズの他作品と何も変わらないのだが、あの『みんゴル』を携帯機でプレイできるという点がとにかく革命的だった。PSPというハードがどれだけのパワーを持っているのか、万人に明瞭な解を示すバロメーター的作品と言える。
携帯機で初めて発売された『みんゴル』ながら、通常コースを6つ収録するなど据置機版にも見劣りしないボリュームを実現したことも好感触だった。無線LANによるオンライン対戦の実装は見送られるも、続編『みんなのGOLF ポータブル2』にて実現した。
PlayStation 3
出典:Wikipedia
プレイステーション3(以下、PS3)で発売されたローンチタイトルは5本。歴代プレイステーションの中で最も少ない数字となった。
ジャンルの内訳は以下の通り。
アクション | 2(GENJI -神威奏乱-、機動戦士ガンダム Target in Sight) |
FPS・TPS | 1(RESISTANCE 人類没落の日) |
スポーツ | 1(宮里三兄弟内蔵 SEGA GOLFCLUB) |
レース | 1(リッジレーサー7) |
『Marvel’s Spider-Man』の開発会社として知られるインソムニアックゲームズ制作FPS『RESISTANCE 人類没落の日』、元カプコン岡本吉起氏によるアクションゲーム『GENJI -神威奏乱-』、ガンダムゲー随一のリアルな描写が光る『機動戦士ガンダム Target in Sight』など、数は少ないながらなかなか濃ゆいメンバーが揃った。
今一度見返すとバンナムが頑張ったなと思わずにはいられない。評判はともかく、新ハード発売日にしっかりと内容あるゲームを2本もリリースしたことは称賛されるべきだろう。加えて、この辺りからSCEがローンチタイトルをちゃんと用意するようになり、ファーストパーティとしての責任を果たしているように感じる。
PS3とXbox360世代というのはSDからHDへの移行期だったわけだが、ここに苦戦するメーカーが本当に多かった。それがローンチタイトルの数にも表層化していると感じるし、実際肝心のゲーム内容に粗が目立つ作品が散見された。
注目タイトルは『機動戦士ガンダム Target in Sight』。
出典:PlayStation
PS3のマシンパワーを如何なく発揮した超リアルなガンダムの描写は、それだけでファン垂涎ものである。PS3発売前に公開されたトレーラーでも、PS2のガンダムゲーとは一線を画すグラフィックに多くのゲーマーが沸いた。
ただしその中身はかなり硬派。ちょっとでも集中砲火を食らえばすぐ撃墜されるバランスは、他のガンダムゲーが有するゲーム性とはかけ離れている。正直爽快感も薄い。ただそれが本作のリアル描写に拍車をかけており、結果的に唯一無二のガンダムゲーとへと押し上げている。隠れファンが多い作品、かもしれない。
PlayStation Vita
出典:Tokyoship, Wikipedia
プレイステーションVita(以下、PS Vita)で発売されたローンチタイトルは20本。歴代プレイステーション至上ダントツで多い数を誇る。
ジャンルの内訳は以下の通り。
アクション | 4(真・三國無双 NEXT、地獄の軍団、忍道2 散華、 塊魂 ノ・ビ〜タ) |
アクションアドベンチャー | 1(アンチャーテッド 地図なき冒険の始まり) |
アクションRPG | 2(ロード オブ アポカリプス、ダーククエスト) |
シミュレーションRPG | 1(魔界戦記ディスガイア3 Return) |
シミュレーション | 1(ドリームクラブZERO ポータブル) |
アドベンチャー | 1(真かまいたちの夜 11人目の訪問者) |
格闘 | 2(BLAZBLUE、ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3) |
スポーツ | 2(パワースマッシュ4、みんなのGOLF 6) |
レース | 3(F1 2011、ASPHALT:INJECTION、リッジレーサー) |
音楽 | 1(マイケル・ジャクソン ザ・エクスペリエンスHD) |
その他 | 2(麻雀格闘倶楽部、モンスターレーダー) |
PS3で人気を博したお馴染み『アンチャーテッド』のポータブル版『アンチャーテッド 地図なき冒険の始まり』、アクションとストラテジーを融合したPS Vita専用の意欲作『地獄の軍団』、『天誅』を彷彿とさせる忍者ステルスアクション『忍道2 散華』など、ゲーマーの食指が動くようなタイトルが揃った。
パッと見て分かるように、様々なジャンルからそれも複数本チョイスされた気合入りまくりのラインアップだ。この20本という数字はプレイステーション系以外のハードを含めても2番目に多い数字で、唯一これに勝るのが「ゲームボーイアドバンス」の30本である。SCEのPS Vitaに対する大きな期待が伺える。
ただその期待も虚しく、PS Vitaは成功したハードとは言い難い。PSPの躍進を支えた『モンスターハンター』が発売されれば、状況は幾分か好転したように思えるが・・・どちらにせよスマートフォンの台頭などもあり、これ以上任天堂とパイの奪い合いをするのは限界だったのかもしれない。
注目タイトルは『忍道2 散華』。
出典:PlayStation
PS2で発売された『忍道 戒』の正統な続編。忍者ステルスアクションとして完成度の高い同シリーズがローンチタイトルとして用意されていたのは、なかなか豪華なことだったんじゃないだろうか。
どう見ても『天誅』にしか見えないが、それもそのはず。『天誅』も『忍道』も開発会社が同じ「アクワイア」だからだ。両者はシステムや雰囲気がとてもよく似ており、よって一部では「天誅のパクリゲー」という誤解を受けてしまっている不遇なタイトルでもある。
『天誅』を生み出したアクワイア製だからこそ、完成度は折り紙付きだ。今のところ本作を最後にシリーズはストップしており、新作の登場が待たれるが・・・なかなか難しいのかもしれない。
PlayStation 4
出典:Wikipedia
プレイステーション4(以下、PS4)で発売されたローンチタイトルは12本。据置型PSの中では最も多い数字となった。
ジャンルの内訳は以下の通り。
アクション | 2(真・三國無双7 with 猛将伝、KNACK) |
アクションアドベンチャー | 3(トゥームレイダー、龍が如く 維新!、 アサシン クリード IV ブラック フラッグ) |
FPS・TPS | 3(バトルフィールド4、KILLZONE SHADOW FALL、 コール オブ デューティ ゴースト) |
シミュレーション | 1(信長の野望・創造) |
スポーツ | 2(FIFA 14 ワールドクラスサッカー、NBA 2K14) |
レース | 1(ニード・フォー・スピード ライバルズ) |
前提として、PS4は初めて海外先行で発売されたハードということを念頭に置く必要がある。これは当時のインタビューで吉田修平氏が理由を語っていて、”国産タイトルの充実を図り、万全を期したい”という思いからそうせざるを得なかったようだ。
そのうえでローンチタイトルを眺めてみると、いかがだろうか。「それでもほとんどが洋ゲーじゃね?」というのが多くの人が感じるところかと思う。実際12本のうち8本が海外産と大半を占め、国産タイトルは全体の3分の1とスケールの小さい数字に留まった。しかも、縦マルチや移植などが多いところも目につく。
これはすなわち、国内スタジオの多くがスマホゲームに注力し出したことを意味する。日本は、海外ほど家庭用ゲームが売れる土壌ではなくなってしまったのだ。家庭用ゲームを愛する一人として寂しい限りだが・・・。
ただその中で、天才プログラマー「マーク・サーニー」氏が総監督を務めた『KNACK』や、時代劇風な世界観がシリーズの中でも異彩を放つ『龍が如く 維新!』などがラインアップに並んだところを見ると、発売日を遅らせた意味はあったのかもしれない。
注目タイトルは『KNACK』。
出典:PlayStation
『クラッシュ・バンディクー』や『ジャック×ダクスター』を作ってきたマーク・サーニー氏が総監督なだけあり、親しみやすい絵柄に誰でも遊べる間口の広い作品に仕上がっている。『クラッシュ・バンディクー』のように難易度が高いわけではないため、ゲーマーにはいささか退屈な部分もあるかもしれない。
とはいえグラフィックの美しさや、巨大化したナックが街中で暴れまわるギミックなど、PS3より明確に進化した映像表現に次世代を感じ取ることができるだろう。PS4の入門ソフトに適した作品と言える。実際日本のPS4発売時には、本作のダウンロードコードが無料で付属する数量限定本体セットが発売され、多くのゲーマーが『KNACK』に触れることとなった。
そして、PlayStationは次なるステージへ
出典:Sony Interactive Entertainment
PS1から数えて、おおよそ26年の年月が経った。
PlayStationは次なるステージに進み、そのナンバリングには”5″を刻み込む。
まず、先日の映像配信イベントで発表されたタイトルの中で、「2020年ホリデーシーズン」の発売が告知されたものを挙げてみよう。おそらくだが、これらがローンチタイトルに名を連ねる可能性は高い。
この中だと、『Astro’s Playroom』はPS5にプリインストールされたタイトルであることが告知済み。そして『JETT : The Far Shore』や『Bugsnax』あたりは、ダウンロードタイトルの可能性があり得る。
よって純粋なパッケージタイトルは今のところ約4本となるため、今までの傾向を考慮に入れれば、ここにあと数本追加されることが考えられる。すでに『アサシン クリード ヴァルハラ』はPS5での発売を告知しており、ローンチタイトルに加わる可能性有り。『コール オブ デューティ』の新作も2020年に登場することが決まっているため、その動向が気になるところだ。
おそらくだが、PS4がそうであったように、いわゆる”洋ゲー”が大勢を占める可能性が高い。国産タイトルに関しては現状有力視されているものがないため、移植や縦マルチ中心にラインアップに加わる可能性はある。強いてタイトルを挙げれば、2020年発売を予定している『テイルズ オブ アライズ』あたりは、PS5でも発売されるかもしれない。
あと、過去のローンチタイトルを眺めていて、実は一つだけ皆勤賞のジャンルがあることに気づいた。
それは、レースゲームだ。
正直『リッジーレーサー』シリーズの功績が大きいのだが、PS4でも『ニード・フォー・スピード』シリーズが発売されているため、PS5のローンチでも何かしらのレースゲームが発売されるのではないかと勝手に思っている。
今のところの注目タイトルは『Marvel’s Spider-Man Miles Morales』。
出典:4Gamer
大ヒットした『Marvel’s Spider-Man』の新作。正統な続編なのか、アップグレード版なのかは未だ分からない。巷では『アンチャーテッド 古代神の秘宝』のような、DLC以上パッケージ未満ぐらいのボリュームなのではないかと言われている。
いずれにせよ、PS5最大の特徴である「SSDによる高速ローディング」を体感する格好のタイトルであり、加えてマイルス・モラレスを主人公に据えた新たな物語も非常に気になるため、ローンチタイトルでは間違いなく”買い”の一作だろう。
アメコミにそこまで詳しくない方にとっては、「マイルス・モラレスって誰だよ!」となっているに違いない。今後「マイルス・モラレス」を知るオススメの映画と合わせて、紹介記事を書きたいと思う。
かなり長くなったが、振り返りは以上となる。
いやあ、長々書いてきたけど、全部ひっくるめた総括としては、新ハードの発表はやっぱり心躍るね!ってことね。今後の情報公開が楽しみでならない。大きなワクワクに包まれた中で、筆を置きたい。
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