レビュー

【レビュー】『ファイナルファンタジーVII リメイク』 新生『FF7』は原作プレイヤーの追憶を過去のものとしたのか

FF7R クラウド

初代プレイステーションで発売された『ファイナルファンタジーVII』(以下、FF7)は、言ってみれば「お母さんのカレー」である。

誰でも作れる定番料理。自分で作ってみても、ルーさえ使えば美味しいカレーが簡単に出来上がる。卵やチーズをトッピングすれば更に味わい深くなり、その手軽さはあまりに心強い。

でも、なぜだろう。なぜこうも「お母さんのカレーを食べたい」という懐旧の情に駆られてしまうのか。同じレシピで作ったカレーのはずなのに、お母さんのカレーはなぜああも愛おしいのか。ただの思い出補正なのか、ノスタルジアが作り出す幻想なのか・・・

ああ、そんなことはもうどうでもいい。とにかくあのカレーがまた食べたい・・・自分で作ったカレーではなく、素朴ながら鮮やかに記憶に残るお母さんのカレーが・・・

お母さんのカレー
お母さんのカレー尊い。

・・・何の話だったか。そうだ、『FF7』の話だ。

要するに、私にとって『FF7』は「記憶に残り続ける懐古ゲーの象徴」ということである。決してネガティブな意味で言っているわけではなく、『FF7』が稀代の名作であり、当時熱中した一人だからこそ強く想いを馳せてしまうのだ。

これは何も私だけに限った話ではなく、実際『FF7』はシリーズの中でも特別なタイトルである。神格化されていると言ってもいい。

「好きな『FF』シリーズは?」と問われたら、多くの場合『FF7』をマジョリティとして、他に挙がってくるのは『ファイナルファンタジーX』(以下、FFX)あたりだろうか。そして、特に30代を超えたおっさんゲーマーにとっては、『FFX』よりも『FF7』が刺さる(実際はドット絵の『FF』が最も刺さる)。

なぜ『FF7』はこうも人気なのだろうか?

オリジナル『ファイナルファンタジーVII』の魅力とは?

理由は色々と考えられる。まず『ファイナルファンタジーVI』まで採用されていたドット絵から初めて脱却した作品であること。

ドット絵はそれはそれで味があり、今でも根強いファンがいるのは確かだが、3Dグラフィックスで構築された初のFFというインパクトはとても大きいものがあった。CD-ROM3枚組というボリュームも話題を呼んだ。

FF7 ミッドガル

出典:スクウェア・エニックス
ミッドガルのアイコニックなデザインは、まさに新世代の象徴だった

次に、ストーリーがよく出来ている点。

『FF7』は23年前に発売されたゲームであり、はっきり言ってかなり古い作品だ。20年以上も経てばトレンドは移ろい、プレイヤーの嗜好にも変化があって当然である。果たして『FF7』のシナリオは過去の遺物なのか。

否、そんなことはない。名作のシナリオは簡単には色褪せない。

現代でも十分通用しているし、ミッドガル脱出までに描かれるテロ活動に関しては、むしろ現代の方がより世相を反映している。ストーリー中盤以降に関しても、月並みな表現になるが、捻りが効いていて先が気になるよう作られている。

FF7 クラウドとセフィロス

出典:スクウェア・エニックス
キャラクターの過去や関係性の描き方が丁寧なのも特徴の一つ

そして、キャラクターの人気も忘れてはならない。

それを象徴する出来事が先日あった。NHKで行われた『全ファイナルファンタジー大投票』である。これは「好きな作品」、「キャラクター」、「ボス&召喚獣」、「音楽」の4つの部門で視聴者からの投票を募り、その結果を発表する番組だ。

このキャラクター部門において、我らがクラウドさんがなんと、堂々1位を獲得したのである!

さらにトップ10にはエアリス、ティファ、ザックスがランクインし、11位にはセフィロスが続いた。確認しておくが、23年前のゲームである。当時の小学生は(私含めて)三十路を超えている。

凄いよ・・・凄すぎるよ『FF7』・・・

FF7 セフィロス

出典:スクウェア・エニックス
みんな大好きセフィロス

他にも植松信夫先生による印象的な音楽だったり、マテリアシステムによる自由度だったり、時たま挟まれるユニークなミニゲームだったりと、『FF7』の魅力を挙げれば枚挙に暇がない。

『FF7』には確かな魅力が詰まっている。決して原作プレイヤーの過度な懐古心が生み出した「過大評価ゲー」ではない。

実際のところ『ファイナルファンタジーVII リメイク』はどうだったのか

FF7R 座り込むエアリス

以上を踏まえて『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FF7R)について書いていきたい。つまるところ、熱心なファンが多い原作の高いハードルを超えられたのか、という話である。

先ほど申し上げた通り、私も『FF7』ファンの1人だ。無駄に母親の作るカレーになぞらえるくらいには。なので『FF7R』には、多大な期待と不安が交じり合った複雑な胸中で臨んだことをここに記しておく。

さて、結論から申し上げると、『FF7R』は私が意地悪く設定した高いハードルを悠々飛び越え、『FF7』を現代のクオリティに昇華させた、素晴らしいリメイク作品である。

その要因はどこにあるのか。新たに構築されたマテリアシステムなのか、アレンジされた素晴らしいサウンドなのか、律儀に再現されたミニゲームなのか。

どれも『FF7R』たらしめる要素であることは間違いないが、私が特に印象的だったのが『バトル』『深みのあるキャラクター描写』だ。

その一方でダンジョンギミックは進化しなかった

・・・とその前に、いきなり関係ない話で恐縮なのだが、後述する好印象ポイントのためにも、『FF7R』のマイナスポイントを先に紹介させて欲しい。

RPGにはダンジョンが不可欠だ。探索し、戦闘し、探索し、戦闘し・・・というルーティンを繰り返してダンジョンクリアを目指す。そして多くのRPGには、ダンジョン探索において謎解きやギミックの要素がある。このようなゲームデザインのお作法に則り、『FF7R』にも数多くのギミックが用意されている。

これが、なんというか・・・その・・・

あまり面白くない。

様々なシチュエーションが用意され、プレイヤーを飽きさせないよう工夫を凝らした跡が見えるだけにあまり言いたくないのだが、自分の気持ちには正直でなければならない。

一つ紹介しよう。クラウドとエアリスが二人で冒険する際、ロボットアームを操作し、そこにエアリスを乗せて運ぶギミックが登場する。意地悪にもハシゴが届かない位置にかかっており、そのハシゴを下すためにもエアリスをロボットアームで運ぶ必要がある。

FF7R クラウドとエアリスの共同作業
クラウドとエアリスの共同作業に胸が高鳴る!はずだった・・・

このロボットアームの操作というのが、一言で言ってしまえばダルい。特段パズル的思考が必要なわけでもなく、本当にただ物理的に高所な位置にエアリスを運ぶがために、やけに鈍重なロボットアームの操作を強いられる。楽しい、というよりイライラが勝る。やらされてる感がハンパない。

グラフィックが綺麗になると、色々と嘘がつけなくなるため動きにもリアリティが求められる。だがリアルにしすぎると、バーチャルであるはずのゲームに現実性が寄り添いすぎてしまい、途端にストレスフルになる。そこにゲーム性があればまだ許容できるが、残念ながらこのロボットアームにそこまでの奥深さはなかった。

FF7R エアリス
でもエアリスはかわいい。

以上のように、『FF7R』のダンジョン攻略におけるギミックは正直楽しくない。一見RPGにおいて致命的のように思える。

だが、そうじゃない。違うんだ。それを見なかったことにできてしまうんだ、このゲームは。転んでもただでは起きない凄いやつ!それが『FF7R』!

奥深く、アクション性豊かなバトルシステム

FF7R クラウドのリミットブレイク

このゲームはとにかくバトルが楽しいのだ。『FF7』のターン性バトルから大きく舵を取り、全く新しいバトルシステムを作り上げた。これには計り知れない勇気と、開発陣のたゆまぬ努力があったことが推察される。

『FF7R』のバトルシステムはとてもアクション性の高いものとなっている。ジャンプこそできないが回避とガードがあり、攻撃方法にはただ殴るだけでなく、スキル技が用意されている。このスキル技もバラエティに溢れ、どれを使うかプレイヤーをいい意味で悩ませてくれる。プレイヤーに与えられている選択肢は多い。

だが、『FF7R』はそれに加えて「キャラクターチェンジ」を駆使して戦う楽しさが詰まっている。

クラウドは剣を扱う王道、ティファはコンボが肝要となる格闘、バレットは豪快な爆発射撃、エアリスは魔法を駆使してチクチク戦う(正直エアリスはそこまで楽しくない・・・)といった具合に、それぞれのキャラクターにはっきりと個性がある。この中でクラウドとティファが特によくできていて、爽快感と実際の性能を見事に両立している。

触っていて楽しいというのは重要で、バトルに対するモチベーションが俄然変わってくる。バトルがメインコンテンツの1つなRPGにおいて、この価値は大きい。

FF7R 格闘で戦うティファ
『FF』のジョブでいう「モンク」のティファ。爽快感があって良き。

ゲーム性にも触れておきたい。『FF7R』のバトルは殴るだけでは倒しにくい敵が早々に現れる。それがチャプター1のチュートリアルで登場する「スイーパー」だ。この時、戦闘中のクラウドが丁寧に「魔法を使え」とプレイヤーに教えてくれる。ここでプレイヤーは、『FF7R』の敵には弱点が設定されており、そこを突いていくのが重要と知る。

FF7R 魔法を使えと教えてくれるクラウド
優しいクラウドさん。

弱点を突くと敵をバースト状態にすることが可能となる。この状態では敵は動けなくなり、またダメージ倍率もアップする。タコ殴りボーナスタイムとでも言おうか、この間はプレイヤーが自由にコンボを叩き込めるため、とても爽快感がある。

FF7R 敵のバースト状態
殴り放題で気持ちいい。

そして、『FF7R』のバトルで特筆すべきは「ボス戦」だ。このゲームのボス戦はとても凝っている。

ボスとの戦いではフェーズ性が敷かれており、ダメージを与えるごとにボスの攻撃方法や弱点が変わったりするなど、単調さを感じさせないような工夫が施されている。最終的には如何にバーストさせるかに尽きるわけだが、その過程ではフェーズ毎に、物理なのか魔法なのか、防御なのか回避なのかといった選択が求められ、戦いの奥深さに寄与している。

ちなみに気になる方は、体験版に収録されている「ガードスコーピオン」戦で、その一端を感じることができるのでお試しあれ。

FF7R ガードスコーピオン
ただチュートリアルとしては濃い味すぎるというか、気合い入れて作り過ぎ感はある。

23年ぶりに再会したクラウドの髪の毛はサラサラで、バレットは超いいやつだった

「『アドベントチルドレン』やら『クライシス コア』やらあって23年ぶりじゃねーだろ!」ってツッコミはさて置き、『FF7R』のキャラクター造形は本当に凄まじい。グラフィックがいいゲームは数あれど、キャラクター造形にここまで力を入れている作品は一握りだと思う。そしてその中でも『FF7R』は抜きんでている。何か開発陣の執念めいたものを感じる。

FF7R クラウドのサラサラな髪
クラウドの髪のサラサラ感にビビる。
FF7R クラウドから花をもらうティファ
ティファの容姿端麗ぶりにもビビる。
FF7R ティファのアップ
距離が近い。割と本気でドキドキする。
FF7R エアリスのアップ
エアリスも近い。最高かこのゲーム。

ただし、意地悪な言い方になってしまうが、『FF』シリーズのグラフィックが良いのは当たり前というか、もはや良くしなければならないという使命感、責務を背負った作品だと言えるだろう。『FF』のグラフィックがクソなのは世間が、そして当事者のスクウェア・エニックス自身が許さないのだ。

そういった意味では、『FF7R』のグラフィックは、スクウェア・エニックスの底力を改めて認識する領域に至っていると私は感じる。

だが、今回推したい部分というのはそこではない。『FF7R』は見た目の「キャラクター造形」もさることながら、内面の「キャラクター描写」が本当に素晴らしいのだ。それを強く感じさせるキャラクターが「バレット」である。

FF7R バレット

この男、序盤はクラウドへの不信感を隠そうともせず、ベラベラ皮肉を並び立ててくる。それも戦いながら、器用に延々と喋り続ける。そして事あるごとに「星の命がどうたらこうたら」と宗教めいた弁舌を繰り返し、プレイヤーにある種の精神攻撃を仕掛けてくる。

率直に言ってうるさい。とてもうるさい。

第一印象は最悪だ。これをミッドガル脱出までの物語で覆せるとは思えない。

しかし、今回のスクウェア・エニックスは一味違った。原作では3~5時間の体験を大きく膨らませ、そこにキャラクターの内面的成長というドラマ性も持たせることに成功したのである。

ネタバレは極力省いて説明するが、中盤以降、このバレットという男が如何に仲間思いで熱い心を秘めているのか思い知る場面がある。とても悲壮感漂うシーンもあるのだが、持ち前のバイタリティでそれを吹き飛ばしていく。クラウドが無口な分、パーティの活力剤のような、ムードメーカー的役割も担ってくれる。

FF7R バレットとマリン
父親の顔も見せるバレット。ギャップが凄い。

ゲーム序盤と終盤でここまで印象が変わるキャラクターも珍しい。バレットというキャラクターが「何やら危険で嫌なヤツ」で終わらなくて本当に良かった。そして何より、『FF7』という多数の人気キャラクターを擁するタイトルで、その人気を後押しするようなキャラクター描写を成し遂げた開発陣には感謝しかない。

これはひとえに、偉大な原作へのリスペクトを銘記し、さらに良いものを作り上げようという信念が功を奏した証左であろう。オリジナル『FF7』への愛に満ち溢れたリメイク作品だと、私は感じた。

FF7R ジェシー
アバランチメンバーも輝いてたね。

これぞ待ちわびた『FF7』のリメイク

『FF7R』は

原作愛 と スクウェア・エニックスの本気

が合わさった最高のリメイク作品となった。あのスクウェア・エニックスが、画竜点睛を欠くことなく、多少のマイナスには目を瞑れるほどの名作を作り上げたのだ。

表題の「追憶云々」については、これだけ原作愛に満ちていて、それを超えんとする信念を感じさせる作品が出てくれば、過去を偲んでばかりはいられない、この本気のリメイク作品と真剣に向き合わなければ失礼と言ったところだろうか。

「お母さんのカレー」的に言えば、お母さんのカレーもいいけど、例えば嫁さんとかがそれを超えんとするカレーを作ってくれたなら、ちゃんと味わおうぜ!って話である。

とはいえ、『FF7R』をクリアした後に、改めてオリジナル『FF7』をプレイしたくなったのも確かで、新旧を比べるのも一興だろう。

FF7R 魔晄炉を見上げるクラウド
原作でも印象的だったシーンが再現されていると、正直ちょっと泣きそうになる。

最後に、『FF7R』の批判でたまに見る「分作」について書いておきたい。

私の所感としては、『FF7R』は分作にして正解だったと思っている。もしこれを一本のゲームとしてまとめあげようとしたら、間違いなくどこかしらで妥協点を設定し、何かしらが間引かれていたことだろう。結果論ではあるが、今回の体験が薄く広くされてしまうのは残念でしかない。待望の『FF7』のリメイクがそれではいけないと思う。

開発陣も断腸の思いだったことは想像に難くない。だが、この『FF7R part1』を作り上げた方たちであれば、今後出てくるリメイク続編に関しても間違いないんじゃないかと私は感じている。今はただ、クリアした余韻に浸り、気長に続編を待っていたいと思う。

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